迂路つ記の雑記帳

鳥と、サッカーと、自堕落な日々。

Category: 飲み喰い  

とんかつとんき

昨日の夕方、学生時代の一部を過ごした国分寺に行った。

駅の周辺を少しだけ歩いてみたが、二十年近くの時を経たのにもかかわらず、変わっていない部分もある。もちろん、全く変わってしまったところもある。よく寄った喫茶店や定食屋など、かみさんと懐かしく眺めてまわった。そう、かみさんはその頃の彼女でもある。同じ時間を、しかも相当に若い時間を過ごした街だから、いつ行っても感慨がある。



そのなかで、どうしてももう一度行きたいと願っていた店がある。それが、「とんかつとんき」だ。南口を出て国立方面への道を少し歩いたところにある。学生時代にはできたばかりの店で、ロースかつ定食が確か、1,200円だったように記憶している。自分にとって、最高のトンカツが喰える店で、もちろん、そう何度も喰える値段ではなかった。よほどいい事があった時、あるいはパチンコで大勝ちした時、かみさんを誘ってよくこの店に来た。その後、どこのとんかつ屋に行っても、ここの味を超えると感じたことはなかった。

十五年ぶりくらいだろうか、ドキドキしながら、子供たちの手を引いて店に入る。少し白髪が増えたご主人。体型にも、厨房から客を向かえる表情にも、変化がない。おかみさんは、当時に比べたらずいぶんほっそりしたようだ。時の流れを感じ、言葉にしがたい感慨がある。

「学生の頃の父さんにとっては、最高のご馳走だったんだ。」

ロースかつ定食四人前が運ばれて来るまでに、なんども子供たちにそんな話をした。そして、久しぶりに喰う。美味い。子供たちも気に入ったようだ。だが……。何かが違うような……。それが何かは分からないまま、それでも十分に満足して店を出た。

クルマで家に向かう途中、思い切ってかみさんに言ってみる。

「何か、もっとずっと美味かったと思うんだけど……。」

「そう、私もそう思った。」

「なんだろう。」

暫く考えながら運転したが、カツには変化らしい変化が見られなかった。他に原因が考えられない。また、思い切って言ってみた。

「それだけ貧しかった、ということかな。」

「ああ、そうか。きっとそうだね。」

二十年近い時の流れは、色々なことを変えて来たんだろう。桶を抱えて銭湯に行った頃に比べれば、こんな自分でも少しは贅沢に侵され始めているようだ。憧れのトンカツの後味は、ちょっと苦かったり、甘酸っぱかったりと、複雑な味がした。

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